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空白の天気図

 9月26日は、台風の特異日といわれる。昭和34年の伊勢湾台風や昭和29年の洞爺丸台風など、この日に上陸している。あと、9月16、17日も台風の特異日といわれる。16日には昭和36年の第二室戸台風、17日には昭和20年の枕崎台風などが上陸している。その枕崎台風をテーマにした柳田邦男のノンフィクション「空白の天気図」が手元にある。この台風は上陸時の中心気圧916.1hPaで、日本での観測史上、昭和9年の室戸台風に次ぐ第二位の低さであった。被害は、九州よりも原爆が投下された直後の広島で大雨の被害が甚大であった。
この本の発行は昭和56年で、私が若い頃に買ったようだ。今日、本棚から取り出して見ているが、この中にも防災のヒントがあるかもしれない。なぜ空白の天気図と言われるのか、この本の次の記述から引用する。
 天気図のプロットをよく見ると、九州の南半分から奄美諸島にかけての気象観測点からの入電は全くと言ってよいほどなく、各地とも白マルのまま何のデータも記入されていなかった。それは、台風の暴風により通信線が途絶した地域を示していた。データが空白の地域は台風の被害がすでに発生している地域なのであり、空白の地域が広ければ広ければ広いほど台風の勢力が大きいことを意味していた。
 午前十時の天気図で、このデータのない”白い”範囲は、台風の中心から半径150kmから200kmに及んでいたが、午後2時のプロットを見ると、”白い”範囲は九州の中部から北部にかけて一段と広がっていた。それは台風の進行と鮮やかに一致していた。
 さて、今年の9月は台風の発生が異常に少なく、上旬に13号が接近してから全く発生していない。極めて異常なことである。しかし、10月になっても気温、海水温も高いと見られ、台風来襲に備え、防災には注意を払う必要がある。